私には学生の頃に初めて感銘を受けた小説で、作家・藤沢周平さんの「蝉しぐれ」という作品があります。

藤沢周平さんは時代小説の書き手で、その世界では有名な方で、数多くの素晴らしい作品を世に残されています。

 

「蝉しぐれ」は江戸時代の小さな藩(今で言う県)を舞台にした時代小説です。

この作品には、組織の中に生きる現代人の苦しみにも通じる、組織内での葛藤や、権力争い、また胸に秘めた想い人への切ない心情や、友への想い、正義を貫く覚悟など、

様々な人間模様と心理が、絶妙に配置された言葉と、心情描写で描かれています。

 

特に、藤沢周平さんが他の作家の方に比べ突出しているのが、昔の日本人が感じていたであろう、自然の美しさと自然と共生していくという感覚が、

見事にみずみずしく描写されており、読み手を物語の舞台へと引き込みます。

 

そして、その自然の美しさと、登場人物たちの心情や精神が見事に融和し、小説を読みながら1本の映画を観ているような感覚にさせられます。

心情の描写が非常に巧みなので、自然と登場人物たちに感情移入することができ、かつ物語自体は丁寧に静かに進行していきます。

ですが、登場人物たちの心情が大きく揺れ動く時はダイナミックに物語が描かれ、

非常にひとつの作品中で、緩急がつけられていて、そういった点も読み手を惹き込む要因です。

 

 

古来から日本人が延々と受け継いできた、自然を美しく感じる感性と、自然への畏怖。

現代日本人に失われていく、礼節を重んじる心と自分の正義を貫くために闘う心。

現代の日本人も持つ、愛する人や友への想いと、それを守るための必死の覚悟。

ゲームやSNSもいいですが、偉大な文人が残した日本人としての心を描いた作品を、こんな時代に生きているからこそ、読んでみてほしいです。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でホアルー ベトナムをフォローしよう!

Latest Posts from Vietnamアンカー

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です