ベトナム製造業の現地調達率の低さの是正へのアプローチ

ベトナム製造業の現地調達率の低さの是正へのアプローチ

中国から東南アジア諸国への製造拠点の移転を進める企業が増える中で、タイは次の中国としての地位を不動のものとし、タイ現地でのサプライチェーンも整備・拡充され製造拠点の移転先としてタイはすでに成熟期に差し掛かっています。

最新のジェトロの資料によると、タイでの製造原価は日本での製造原価を100とした場合の比率で、82.5となっており、コスト面での”うまみ”はもはやタイには求められません。(中国80.5 ベトナム73.1)

 

タイではすでに製造業の原材料・部品の現地調達率が57.2%となっており、その現地サプライチェーンの充実度が伺えます。(中国は66.3%)

ベトナムの現地調達率は36.3%となっており、原材料・部品の調達は日本及びASEAN・中国からがメインとなっています。

この数字からも推察できますが、ベトナム製造業の主流産業は川中(部品加工など)産業や川下(組立・サービス)産業であり、川上(石油・鉄鋼・素材)産業ではないのです。

 

よって、現地調達率の低さをそれほど悲観する必要もないと私は考えていますが、中国やタイと比べその産業構造で致命的に劣る点があります。それがサプライチェーンを構築する裾野産業の脆弱さです。

 

ベトナムにおいて民間・個人企業の経済活動が公式に認められたのは1988年


ベトナムの民間・個人などのいわゆる私企業の経済活動が公式に認められたのは1988年からで、それまではオフィシャルな経済活動は国営企業に限られていました。(それでも個人商店などは普通に存在していたようです)

故に、90年代以降、国の政策として中小・零細企業を支援するようなものは形式上が制度化されていましたが、そのほとんどは形だけで、実質中小零細企業の支援策は皆無であったと言えます。

当然資金力もなく、技術力も未熟な企業が長期間安定した受注を確保する事は不可能で、あまたの中小零細企業が起業されては消えていくような状況が日本・韓国企業のベトナム進出が本格化する2000年代後半まで続いていました。

こういった一連の政府の施策の甘さ、ひいては各産業の国営企業の寡占状態が続いた事が要因で、ベトナムの裾野産業は長きに渡って停滞してしまったのです。

 

ベトナムバイク市場を席巻した日系メーカーのコスト意識が現地サプライヤーを育成


1990年代後半、ベトナムバイク市場へ進出したホンダは中国メーカーとの競合を制してトップシェアを獲得。ベトナムでバイクといえばホンダと呼ばれるほど急成長を遂げ、それにともない日本的ものづくりを現地サプライヤーと共に押し進め、現在では車種によってはベトナム現地部品調達率が90%近くに達しているものもあり、

まさにベトナムホンダの製造メーカーとしての現地サプライチェーン構築の過程に、ベトナム製造業の現地調達率向上の指針が体現されています。

 

これは1起業の経営方針に留まった事例にすべきでなく、ベトナム政府はベトナム国民の日本的ものづくりへの親和性の高さに着目し、日本のトップテクノロジーを保有する企業や日本的ものづくり手法の旗手的な企業を、さらにベトナムへ誘致する努力をすべきです。

 

同時に、ベトナム進出の足枷の一つとなっている諸手続きの猥雑や、要求基準が不明瞭な手続き手数料の廃絶を政府主導で行い、より日系企業のベトナム進出がスムーズになるような体制を作り上げる必要があります。

コンプライアンスの遵守を重要視するのは日本企業にとっては当然の事なので、法体系が整備されていない、もしくは不明瞭な金銭の授受による利得を獲得できる習慣が残る社会には、進出する事に二の足を踏んでしまう経営者も多いのです。

 

川中・川下産業に投資を集中し、裾野産業の成長を促す


大型の設備投資案件となる川上産業への投資は、受注すれば金額も大きく一見派手に見えがちですが、例えば石油化学プラントなどの建設においても、その設計・開発・施行・建設管理はほとんど受注した企業のエンジニアが主導し、ベトナムに創出される雇用は限定的で、その継続性も限定されます。

しかし、川中・川下産業に投資し、海外から優秀な企業をさらに誘致し、その企業の現地サプライチェーンをベトナム裾野産業の現地企業が担う事ができれば、裾野産業のQCD向上や安定した受注の確保に繋がり、やがてその培った技術力やQCD確保能力を活かし、ファブレスやEMS企業としての強みが出せるようになります。

その段階まで進めれば、裾野産業の強さがベトナム経済・産業の一つの強みとなり、より優秀な受託生産企業を求める世界中の企業から注目される国となるでしょう。

 

まとめ


裾野産業の発展には個人に開かれた社会とフェアな競争社会であることが必須です。コネや賄賂がものを言う事も多い今のベトナムの社会通念を、根本から変革できる政策をベトナム政府が打ち出せるかどうかが鍵となりそうですね。

 

 

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