ベトナム政府が掲げる2020年までの工業国化への課題と施策

ベトナム政府が掲げる2020年までの工業国化への課題と施策

ベトナムに進出している日系企業への景況感調査では、中期計画・1〜2年スパンで事業を拡大する予定と回答した企業が69.8%に登るなど、まだまだベトナムという市場はアジア地域の企業にとって魅力的な投資先であり、中国やタイなどからの水平分業先(リスク回避やコストダウンメリットを鑑みて中間工程のみをベトナムに移管するのではなく、製品の全工程を移管する方法)としても注目されています。

 

しかし、あくまでグローバルに川中・川下産業を展開する日系及び中国・韓国資本がメインでのベトナム市場への投資であって、この投資効果がベトナムの裾野産業にまで及ぶのかどうかは、ベトナム現地企業がどれだけ外資資本のサプライチェーンに食い込めるかにかかってくるでしょう。

 

ベトナム政府は2020年までの工業国化を目標として掲げていますが、ベトナム資本の企業が技術力で世界市場と対等に渡り合う事ができて、初めて真の意味で工業国化が達成できたと定義するべきでしょう。

そのレベルに達するには明らかに時間が足りず、しかし目標の2020年に照準を合わせて施策を急ぐのも得策ではありません。

現状のベトナム産業構造と法体系の問題点など、課題を抽出し、なおかつそこからどのような打ち手があるのかを考察していきましょう。

 

まずは裾野産業の成長を促し、経済・産業の土台固めを


先んじてこちらの記事をお読みください

 

上記記事にもあるようにベトナム製造業の現地調達率は36.3%と低く、その是正に対するアプローチは記事内で述べた通り、川中・川下産業により投資を促し、裾野産業のQCDを向上させ、技術力のみで受注できるようなEMS企業などを輩出できる段階までになれば、川上産業にも投資を呼び込む事ができ、自然と現地調達率は向上します。

産業構造をそこまで昇華させる事ができれば裾野産業は成熟し、経済・産業の技術力や生産性・マネジメントやガバナンスは先進国と遜色ないレベルまで向上しているはずです。

そこまで産業構造が成熟すればいよいよ革新的な技術やサービスがベトナム発信で生まれる事になります。まさに真の工業国化と言えるでしょう。

 

 

政府の指針を明確にし、投資を呼び込みやすい明瞭な法体系並びに諸手続きの簡略化を


ジェトロの最新データに興味深いデータがあります。

アジア各国に進出している日系企業のそれぞれの国での、経営上の問題点をアナウンスしたデータがあるのですが、やはり各国で現地従業員の賃金の上昇や、品質管理の難しさや部材調達の難しさが上位にランクインする中で、ベトナムのみが第5位に通関等諸手続きが猥雑という項目がランクインしていました。

これはとても特徴的なデータで、やはりベトナムでは諸手続きがかなり猥雑で、かつ不明瞭な手数料を請求されることも多いです。

ベトナムという国を深く知れば知るほど”賄賂文化”というものがベトナム社会通念の奥底に深く定着していると思い知ります。

 

ですが政府が主導し、賄賂廃絶へ明確に指針を打ち出せば国民は従わざるを得ないのです。これはある意味政府共産党も”身を切る改革”になるのですが、断行できなければ呼び込めたはずの投資を取り逃がす、機会損失がこれからも発生してしまうでしょう。

逆に賄賂廃絶を断行し、世界にクリーンなイメージを植え付ける事ができれば、より投資を得られる機会も増える事になるはずです。

 

 

高いレベルの技術者及び管理者・技術革新を有効な経営資源としてストラテジーを構築できる優秀な経営者を育成


ベトナムに進出した日系企業の進出後の明確な課題が、マネジメントレベルの現地人材の確保・育成です。

 

これはベトナム進出日系企業のみならず、ほぼ全ての企業にあてはまる課題ではありますね。しかし、ことベトナムという若い産業構造の国にとっては実はより根深い問題で、現状での構造的な課題をあげると中間管理職の絶対数の少なさがあります。

やはり国にはその国独自の文化・習慣があり考え方があります。例えば日系企業がベトナムに進出すれば日本人管理者が立ち上げ時は駐在するケースが多いかと思われます。

しかし、ベトナムという国の文化・習慣を全く知らない状態でベトナム人ワーカーのマネジメントを任されても戸惑うことばかりで、上手くいかないケースも多々あります。

やはりベストなのは日本語能力に長け、日本の企業運営や組織運営体制をある程度理解できている現地ベトナム人管理者がいるかいないかでは大きく違ってきます。

しかし、そのポジションを担えるベトナムの30代〜40代のミドル層は絶対数が少ない。日系進出企業でもこの点で頭を悩ませている企業は多いです。

 

ベトナムの政策の歴史をひも解けば理解できるのですが、1988年より私企業の経済活動が公式化されましたが、その後もベトナム経済・産業構造の頂点には国営企業が居座り続けました。

要は民間・個人の私企業の成長を促す政策は実質皆無であったのです。よって、ベトナム企業の99%を占める中小・零細企業の技術力やマネジメント・経営能力は向上すべくもありません。

ということは人材も育たず、若い頃から企業内で叩き上げられた技術者やビジネスマンも育っていないということになります。

それが現在のミドル管理者層の絶対数の不足を引き起こした原因です。

マネジメント経験豊富なミドル管理者層が不足しているなら優秀な経営者も育ちません。よってベトナムは現在産業構造の人材の負の連鎖に陥っているとも言えます。

この現状を打破するには裾野産業及び川中・川下産業の土台を固めて、優秀なベトナム資本中小企業を育成し、ベトナムの離職率の高さを改善することにより、長期勤続者の数を増やせば、自然とマネジメント経験が豊富なミドル層の数も増えていくことになります。

これにはベトナム産業界全体の地道な努力が必要となりますが、若者を企業が育てるという意識が是非ベトナム産業界により根深く定着し、実践されていくことを期待してやみません。

 

まとめ


ベトナムの真の工業国化への課題と施策は裾野産業の育成と土台固め、政府による猥雑な諸手続きの簡素化と賄賂廃絶そして人材育成となりますね。

現在多数のベトナム人技能実習生・留学生・エンジニアが日本に来日して働いていますが、そういった方達が日本で経験を積みベトナムに帰国後に、裾野産業の土台固めや人材育成の面で活躍できれば、日越両国にとってwin-winの関係となるので、そうなっていけば素晴らしいですね。

 

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